あるペンギンの国内近代建築めぐり

主に京都市を中心とする近代建築に関する調査・探訪の記録まとめ。

近代建築は昔から好きでしたが、実は今まで行ったことが無かった神戸を観光してきました。一日かけて北野異人館を練り歩いた中から、気になったものをいくつか挙げる予定です。異人館の建物の多くは書籍やブログでまとまっているでしょう。

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風見鶏の館から北に数分、急峻な坂道を登った先にたたずんでいます。まさかの廃墟です。工事用フェンスが建物を取り囲んでいます。フェンスも倒れており何か物々しい空気です。

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東側のドーマーに至っては完全に抜け落ちてます。
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廃墟化しているとは知らずに行ったので衝撃的な光景でした。数年前は高い塀に囲われて撮影が難しかったようですが、今は塀はありません。写真には映っていないですが、煉瓦造の外階段は片側が崩落しています。数年前の写真でも同じ状況です。

大正8年(1919)の竣工と、明治の建物が多い異人館の中では結構新しい。それでも建物全体の仕様は、他と同じくベランダ・コロニアル様式です。ひし形の窓枠も他の異人館と共通してます。
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かつては公開異人館でしたが、1995年の阪神淡路大震災以降、非公開です。震災の影響は凄まじく、異人館は約3割が消失したらしいです。現在は三十数件が残っているみたいです。

所在地:神戸市中央区北野町2-13-15
竣 工:大正8年(1919) 
構 造:木造2階建て
設計者:不詳
撮 影:2020年2月24日

以前から気になっていたが、思いきって牧師に電話してみたら呆気なく内覧がOKされた。

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国内でもかなり珍しい純和風教会建築。昭和12年(1937)の竣工。同系列の日本聖公会奈良教会は重要文化財となっており、本件も間違いなく文化財級の建物ではあるが、制約が増えるため検討していないという。
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2階が礼拝堂として使用されている。正面のキリスト像は鎌倉彫り。小屋組はシザーズトラス。純和風に見せて中の組み方はバキバキの洋風建築なのは近代建築にはありがち。

京都という土地で教会を建てるとき、排他的ではなく多様性でなくてはならないという信念があり色々とチャンポンな形式になったらしい。

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南面のみ黄色の磨りガラスとなっている。長年の使用で破損していったそうで、北面は無色のものとなっている。これのおかげで堂内は温かみのある空間になっている。

椅子も竣工当初のものだが、3年ほど前に板を改修したらしい。

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改めて外観。瓦の軒模様が十字架、鬼瓦はノアの箱船からの引用で鳩とオリーブがあしらわれている。


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こちらは昭和11年(1936)竣工の牧師館。牧師の自宅として現在も使用されている。牧師は付属幼稚園の園長も兼ねているので秒で出勤できると自慢していた。

牧師の話によると設計者が奈良の教会と同じらしい。「京都市の近代化遺産」によると桃山教会は野田音蔵、一方の奈良教会は大木吉太郎である。大工なのは間違いないと思うがどうなんだろう。
他にも、元々御香宮神社の土地だったという説があるが神社側が否定していることや、神社と間違えて参拝する人が稀にいることなど貴重な話を沢山伺えた。

文化財指定、登録は検討していないが来年は屋根瓦を葺き替える予定であり、改造しながらも大切に扱っていく姿勢がよく分かった。突然の単騎突撃でも温かく出迎えて下さった牧師には感謝しかない。

所在地:京都市伏見区御香宮門前町184
竣 工:昭和12年(1937)
構 造:木造2階建て
設計者:野田音蔵
撮 影:2020年2月22日

フォドラを救済することに夢中になっていたら今月一杯で当施設が閉館するという情報が流れ急遽寄ることに。
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明治16年(1883)に竣工と驚異的に古い洋風建築。本庄市内では最古の洋風建築と伝わる。
明治初期に登場した、地元の大工が見よう見まねで造った擬洋風建築の一種である。公式では「コリント様式」という聞き慣れない表現を用いている。コリント式のオーダーを使っているが、左右対称、ギリシャ風のペディメント(三角屋根)を正面と窓枠に採用、コリント式オーダーからルネサンス式の方が近いと思う。せめて擬洋風建築では。

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館内はよくある歴史民俗資料館となっているが、中々充実している。大型の縄文土器、埴輪を始め中世近世の遺品が幅広く展示されている。中山道の宿場町として栄えたこともあり、明らかに古代から交通の要衝だったことが分かる。だからこそこのような洋館が建ったのだろう。

擬洋風建築としての特徴を揃えた教科書のような建物であり、全体的に造りが甘いと思う箇所があり面白い。

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最大の特徴であるコリント式オーダーは、まさかの木製である。普通は石かコンクリートだが木製は初めて出会った。柱頭部分がやたら大きくややバランスに欠ける。また、柱の間隔に違和感を覚える。格調高い建物では、二本の柱を隣接させた「ペアコラム」が採用されることがあるが、ペアコラムだとしたら離れすぎ、そうでなければ近すぎる中途半端な配置となっている。

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もう一つの特徴として、内装は外観と比べ質素な造りとなっている。何ヵ所か照明を垂らした天井に円形のレリーフがあしらわれている。漆喰を使った鏝絵であり、日本伝統のものである。鳳凰、葡萄、菊?、藤?と和風である。東京、横浜の豪邸と比べると質は低い。

鳳凰のレリーフ
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菊?
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藤?
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葡萄
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ベランダの窓には半円アーチ窓を設けている。簡素だが大変オシャレだ。

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構造上不要なはずの隅石を置いているのも擬洋風建築の特徴である。隅石に石を使わず漆喰の色を変えるだけのケースもよくある。

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個人的に面白いと思ったのは、階段の前に無骨な梁が走っていることだった。洋館ではまず見ない。擬洋風らしさ全開である。

2月末を最後に閉館し、その後は文化財として保存はされていくようだが、詳細は不明。しばらく見納めになる上に二階に今後も上がれるか…

所在地:埼玉県本庄市中央1-2-3
竣 工:明治16年(1883) 
構 造:木造2階建て
設計者:不明(上棟札に記載あり?)
撮 影:2020年2月16日

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