フォドラを救済することに夢中になっていたら今月一杯で当施設が閉館するという情報が流れ急遽寄ることに。
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明治16年(1883)に竣工と驚異的に古い洋風建築。本庄市内では最古の洋風建築と伝わる。
明治初期に登場した、地元の大工が見よう見まねで造った擬洋風建築の一種である。公式では「コリント様式」という聞き慣れない表現を用いている。コリント式のオーダーを使っているが、左右対称、ギリシャ風のペディメント(三角屋根)を正面と窓枠に採用、コリント式オーダーからルネサンス式の方が近いと思う。せめて擬洋風建築では。

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館内はよくある歴史民俗資料館となっているが、中々充実している。大型の縄文土器、埴輪を始め中世近世の遺品が幅広く展示されている。中山道の宿場町として栄えたこともあり、明らかに古代から交通の要衝だったことが分かる。だからこそこのような洋館が建ったのだろう。

擬洋風建築としての特徴を揃えた教科書のような建物であり、全体的に造りが甘いと思う箇所があり面白い。

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最大の特徴であるコリント式オーダーは、まさかの木製である。普通は石かコンクリートだが木製は初めて出会った。柱頭部分がやたら大きくややバランスに欠ける。また、柱の間隔に違和感を覚える。格調高い建物では、二本の柱を隣接させた「ペアコラム」が採用されることがあるが、ペアコラムだとしたら離れすぎ、そうでなければ近すぎる中途半端な配置となっている。

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もう一つの特徴として、内装は外観と比べ質素な造りとなっている。何ヵ所か照明を垂らした天井に円形のレリーフがあしらわれている。漆喰を使った鏝絵であり、日本伝統のものである。鳳凰、葡萄、菊?、藤?と和風である。東京、横浜の豪邸と比べると質は低い。

鳳凰のレリーフ
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菊?
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藤?
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葡萄
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ベランダの窓には半円アーチ窓を設けている。簡素だが大変オシャレだ。

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構造上不要なはずの隅石を置いているのも擬洋風建築の特徴である。隅石に石を使わず漆喰の色を変えるだけのケースもよくある。

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個人的に面白いと思ったのは、階段の前に無骨な梁が走っていることだった。洋館ではまず見ない。擬洋風らしさ全開である。

2月末を最後に閉館し、その後は文化財として保存はされていくようだが、詳細は不明。しばらく見納めになる上に二階に今後も上がれるか…

所在地:埼玉県本庄市中央1-2-3
竣 工:明治16年(1883) 
構 造:木造2階建て
設計者:不明(上棟札に記載あり?)
撮 影:2020年2月16日